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ゲン通信

No.1 より快適な生活『QOL』について

当クリニックでは、健康は「より快適な生活(クオリティー・オブ・ライフ:QOL)」のための 必要条件であると考え、西洋医学のみならず、東洋医学にも力を入れております。ではQOLとは何か と一言でいうと、「身も心も軽い状態」だと考えます。

具体的に「夏のQOL」について考えてみましょう。元来消化器機能が弱い人は夏に弱い人ですが、 日本の夏は高温多湿のため、余計に消化機能が低下し、喉の渇きを癒す冷たい飲み物は さらにその傾向を助長し、水分の排泄が悪くなって体内に余分な水分が貯留することになります。 夏は冬より汗腺が開いていますが、冷房があると体内の余った水を冷却する為、冷房病の原因となります。 夏負けの症状としては食欲不振、軟便、口渇、倦怠感、顔のむくみ、集中力の低下等が挙げられます。 このような状態の時、人間は身体をおもだるく感じるのではないでしょうか?先程述べた「QOL」が 落ち込んだ状態といえます。

こういう時に対処するのが東洋医学の知恵です。 具体的な処方としては清暑益気湯という処方がありますが、7月頃から服用していると、 毎年汗をかかない人が驚くほど汗をかき、この夏はクーラーでも身体が冷えないと言います。 また口渇が強くいくら冷たい物を飲んでも尿量が少ない若い人の場合、五苓散 という薬がよく効き、身体の重さをとるのには即効性があります。冷房病の人には五積散 や真武湯が有効です。加えて東洋医学では食養も大切と考えます。

夏は冷房を適当にして、消化が良く身体を温め利尿作用のある食物を摂って発汗に心掛けて下さい 。

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No.2『快食』について

前回、健康とはQOL(クオリティーオブライフ=生活の質)が高まっている状態であり、一言で言えば 「身も心も軽く感じる状態」であること、東洋医学がその点、高い効果を持つことをお話しました。 この事をもっと具体的に考えると、「快食・快眠・快便」が基本という事になります。今回はこの中で 「快食」について考えてみましょう。「快食」とは朝、空腹で目が覚め、そしてなんでもパクパク とおいく食べられる状態とはいえないでしょうか。もっと端的に言うと「朝起きてすぐカレーライスを食べ られるかという考え方でも宜しいかと思われます。あなたはいかがですか?

実際の臨床としては、新薬(H2ブロッカー、プロトンポンプインヒビター)は、急激な胃痛・胃もたれ 等には即効性があり重宝します。一方東洋医学では、慢性の胃部症状を改善するのみでなく、必要があれば 同時に Ⅰ冷えや Ⅱ下痢や便秘の便通障害をなおし Ⅲ胃部症状の再発の予防など、胃部の局所症状のみなら ず身体全体のゆがみまで治します。特にストレス過多による消化器疾患への漢方の効果は絶大なものがありま す。具体的には、ストレスが多く軟便でもやもやした感じがある時は半夏瀉心湯、軟便で身体がだるく、 もう一つ食べられない時には六君子湯、冷える体質で空腹時に胃痛があり神経性胃炎といわれる場合は 安中散、朝、口が苦く食欲が湧かない人には柴胡剤、冷えが強く食べるとすぐ満腹になる場合 は人参湯、ストレスが強く便秘で胸やけ・ゲップがある場合は清熱解鬱湯などなど、 多種あります。

ちなみに朝、空腹で目覚めるには夕食を八分目にして早めにとり、夜間は胃腸を充分休めることです。最近 若い人に多い「朝食抜き」は絶対宜しくありません。気をつけて!!!

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No.3『冷え』への対応

今年も本格的な冬の到来を迎えました。今月はQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の話をお休みして 寒さによる「冷え」への対応を考えてみましょう。一口で「冷え」といっても原因は甲状腺や副腎皮質の低下 ・膠原病・あるいは貧血が挙げられ、これらの疾患をチェックする重要さは言うまでもありませんが、 これら以外の原因不明なものも多く、部位も手足や腰や肩、背中などがあります。症状も冷えのみが強い 場合やのぼせを伴う場合があり、女性の場合、卵巣機能の低下をひきおこし、不正出血や月経異常、更には 不妊症の原因にもなります。また寒い時期には細菌やウイルスの活動も活発になり、風邪や膀胱炎をおこし たり、血行が悪くなって関節や筋肉の痛みの原因にもなります。

これらの原因不明の「冷え」には漢方は独壇場です。具体的には冷えて下腹部が痛くなり、しもやけが できる場合は当帰四逆加呉茱萸生姜湯、冷えで急激に足腰が痛くなる場合は芍甘黄辛附湯、 足腰が弱くなり、夜トイレの回数が増えた場合は八味地黄丸、たちくらみや浮腫がある月経痛や不妊症には 当帰芍薬散、小食で胃が弱い人には人参湯、寝汗をかき、軟便で朝口が粘る人には柴胡桂枝乾姜湯 などと、枚挙にひまがありません。

日々の養生としては、体を温める食物を摂り運動を心掛け、半身浴や温冷湯により下半身を温める事、 足首の三陰交というツボを刺激することが重要です。ミニスカブーツのお嬢さん、ファッションばかり気 にしていてはいけませんよ。老爺心より。

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No.4『治す喜び』について

「この時期には決して開業しないで下さい。”空亡”ですから。」という三人の占師の忠告にも かかわらず「開業したい」という気持ちが半分、自分の運命をおもしろがる気持ち半分で、中野 サンプラザ前にオープンしたのが97年5月でした。以来、この1年9ヶ月の間には、その予言 が時折、暗雲のように頭の中にたちこめることもあります。慣れないことの山積みで色々苦労も 絶えませんが、医療者として最も大切と思われる「治す喜び」に関してはかなり満足いくものが あります。

実際の治療例を挙げると、①重症アトピー性皮膚炎が半年で完治②子宮内膜症の性交痛と月 経痛が消失③10年以上悩まされていた頭痛やめまいが完治④体外受精を5回行っても妊娠しな かった人の妊娠⑤滝のような汗と抑鬱状態の更年期障害が2週間でほぼ完治⑥5年間続いた無月 経の完全な復調⑦背中の冷えのため安眠できないのが、1日で治った⑧何ヶ所ものめまい外来で 治らない症状が2週間で改善した⑨腎不全で人工透析の身体の重さ、いらいら、便秘が二週間で 改善した⑩ストレスによる不眠、食欲不振、胃痛、動悸、不安の治療例、と治した私の方が驚く こともしばしばです。というのも症例により東西両医学を使い分け、もしくは併用しているとこ ろにあるのではないかと思っています。特にこのストレルフルな現代社会では、「心とからだは 一つである」と考える東洋医学の効力は無視できません。むしろ、ストレスによる免疫力の低下の 為ドリンク剤に頼り、疲れ、だるさといった『半病人』状態の現代人には不可欠なのではないで しょうか。

話は変わりますが、私はシネマフリークで随分映画を観てきました。役者の演技、脚本、 音楽、美術、撮影などそれぞれの持ち場でヴィヴィッドな表現の力強さがあり、さらにバランス もよければ素晴らしい感動を与えてくれますが、各持ち場で場違いな選択をしたり陳腐な仕上が りだと観客を白けさせるしかありません。医療現場でも同じ事は言えるようです。診断にせよ治 療にせよ方法論として確かな多様性を有する事は、より豊かな医療を生むはずです。私も良い映 画のように患者さんに喜ばれる『治す力』のある医療者をめざしたいと思います。

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No.5『快眠』について

今回はQOL(クオリティーオブライフ)の「快食」に続き『快眠』についてお話します。 単純に朝の目覚めが良ければ『快眠』ですが、寝つきが悪かったり、途中で目覚めたり、 嫌な夢をよくみる場合、新薬では超短縮時間作用型のゾビクリンと中間作用型のエチゾラム の併用は催眠導入が早く、目覚めもすっきりしており私もよく処方します。 抑鬱傾向や不安神経症の催眠導入剤は眠気によるふらつきが強く、無理矢理眠らせる感じが 強いようです。

東洋医学の処方としては、寝つきが悪く子育てや人間関係のストレス強く、まぶたが痙攣 したり頭痛がある場合、抑肝散加陳皮半夏を服用すると寝つきが良くなるだけでな く、イライラもとれてきます。胃が弱く中途覚醒や寝つきが悪い場合、寫心湯類を 服用すると胃の方も丈夫になってきます。翌日大事な用件があると眠れない人には半夏 厚朴湯。足がほてって眠れない場合には三物黄芬湯が著効です。排便異常があり不定愁訴が 多い場合は、加味逍遙散が有効で他の症状も徐々にとれてゆきます。抑鬱傾向が強く冷えや 寝汗があり、胃腸障害が強いときには帰脾湯がお勧めです。また、酸棗仁湯を併用 することで催眠導入剤を斬減することが可能です。

東洋医学では自然な睡眠を妨げる要因を除去し、薬物依存をつくりにくく、導入剤よりも 熟睡感が得られるのが特徴です。

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No.6『快便』について

厚生省の発表によると、この数年日本人には大腸がんが急増している様です。 吸収されない内容物が、腸管内に長く停滞することにより生じるウェルシュ菌・ぶどう球菌、 メタンガス等を早めに排泄できるように、繊維成分を多く含んだ食品を摂取する事と、適度 の運動が大腸がんの予防になります。また、この所食品添加物や遺伝子組換え食品、食肉や 肥料へのホルモン剤やダイオキシンの混入などの話題が、連日新聞を賑せていますが、食物 の選択に気を付ける事と、なるべく便秘をしない事がせいぜい我々に出来る自衛法ではない かと思われます

前置きは長くなりましたが、今回はQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の中で、快食・ 快眠に続き、快便について話させていただきます。すっきりとした快便こそは身の心も軽い 状態であり、QOLの高い状態といえます。西洋医学では2・3日排便がなくとも膨満感が なければ口喧しくいいませんが、東洋医学では排便がある事は気を巡らせる事であり、他の 症状を改善させるためにも必須と考えます。

それでは具体的に処方を挙げてみますと、抑鬱傾向と腹部膨満感が強い場合には『大承気湯』 、体質が虚弱で不眠傾向があり、肩こり・めまい・冷え・のぼせ等が強い時には『加味逍遥 散』、顔が赤くのぼせ、心窩部に膨満感がある場合は『三黄瀉心湯』月経異常や月経痛があ り、月経前後にイライラする傾向のある人には『桃核承気湯』、高齢者や虚弱な人で、便が 硬く燥いている場合は『潤腸湯』もしくは『麻子仁丸』という様に、症状に応じていろいろ な緩下剤があります。

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No.7『頭痛』の治療について

日常生活におけるQOLについて考える時、『痛みのない状態は最も大きい要因となります。 今回は傷みの中でも多く見受けられる『頭痛』の治療について考えてみたいと思います。 頭痛には脳腫瘍、脳出血などによる生命に関わる頭痛とそうでない機能性頭痛があります。 後者は若い女性によく見られる、頭を動かした際に、痛みや吐き気を伴う偏頭痛と、 ストレスなどにより精神的緊張が高まって両側のこめかみや後頭部が痛む筋緊張性頭痛、 及び両者の混合型が大部分をしめます。

西洋医学的には酒石酸エルゴタミンを即座に服むしかなく、予防的には抗うつ剤やBブロ ッカーで様子を見ますが、基本的には根治は不可能と思われます。

東洋医学的には、偏頭痛にはまず呉茱萸湯が第一選択で、元々胃が弱く、冷えると痛む 方に処方します。まぶたが痙攣したり、眉間が痛む筋緊張性頭痛には抑肝散、中年以降の方 で、朝、頭がぼーっとして重い方には釣藤散、悪天候や寒冷前線が近づくと頭が重くめまい がある場合には、半夏白朮天麻湯が有効です

最近の著効例を一例挙げてみます。49歳の女性、胃弱で下痢しやすく、下半身の冷えが 強い方です。緑内障と抑うつ傾向があり、抗うつ剤剤を二剤服用しています。10数年間の 頭痛にバファリンは無効でしたが、桂枝人参湯服用で完治し、抑うつ傾向や消化機能の脆弱 さも改善されました。

ある発表によると、偏頭痛の強い人は脳梗塞に移行しやるいとの報告もあります。それはさ ておき、毎日痛みのない快適な日々を送りたいものですね。薬甘草湯は月経前に用いるとメフェナム散と同じような効果が得られます。

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No.8【月経困難症】

今月のテーマは「痛み」のなかでも多くの女性を悩ませている「月経困難症」です。

まず、月経困難症は子宮筋腫や最近話題の子宮内膜症等、器質的な疾患を有するものと 器質的疾患のない機能性月経困難症に分けられますが、今回は機能的月経困難症につい てお話しします。「月経困難症」の原因としては、月経前子宮内膜で産生されるPG(プロスタグランディン)が子宮筋層内に流入し子宮を収縮させる為と考えられていますが 、それ以上の詳しいことは、未だ不明です。

治療は対処療法として、耐えられない様な強い痛みにはPGの産生を抑制するNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)の座薬を用います。通常の痛みには、同じくNSAIDsのメフェナム散と臭化ブチルスコポラミンの併用が有効ですが、それでも無効の場合や、スト レス、冷え、のぼせ、便秘、胃腸虚弱等、他の症状がある場合には、東洋医学的治療をお勧 めします。東洋医学では月経痛は「不通即痛」といって「気・血・水」が通らないと即ち 痛む、と考え、血行の良くない人におこり易いと考えます。また、痛む部分を撫でると痛み が楽になる場合とそうでない場合、あるいは冷やすと痛むか、そうでないかによって、 処方を考えます。

具体的な処方例としては、冷えのみでのぼせがなく夕方足がむくむ場合は当帰芍薬散、赤ら 顔で便秘の著しい場合は通導散、月経前から痛み、便秘と共にイライラする場合は桃核承気 湯、胃腸虚弱など体質の虚弱な方には当帰建中湯が頻用されます。他にも、当帰四逆加呉茱 萸生姜湯、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、牛膝散、折衝飲、正気天香湯、等があげられます。ま た、芍薬甘草湯は月経前に用いるとメフェナム散と同じような効果が得られます。

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No.9『子宮筋腫及び子宮内膜症』

今回は器質性月経困難症である子宮筋腫及び子宮内膜症に関する内容となります。子宮筋腫に関しては周知の事ですので、最近のトピックスである子宮内膜症についてお話をすると、月経の起きる子宮内膜が子宮内膜以外(例えば子宮筋層・卵巣・骨盤腹膜等)に迷入しそこで月経をおこした状態が本態であり、原因は女性ホルモンの関与以外は詳しくは不明です。症状としては子宮筋腫では見られない様な強い月経痛(腰痛・下腹痛・大腿部痛)、月経終了後も続く強い痛み、膣の奥の性交痛や排便痛といった所ですが、不妊症の大きな原因ともなっているのが特徴です。

西洋医学的には腹腔内の癒着やチョコレート嚢腫を内視鏡を用いて剥離焼灼する方法が最近主流となりつつありますが、開腹手術により子宮卵巣共に摘除する事が根治手術となります。対症療法としては低用量ピルや、LHRHアナログ製剤、NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)等があります。

 東洋医学では子宮筋腫も子宮内膜症も同様に血液循環が悪い為と考えます。血液循環が悪いと①しこる②痛む③黒ずむの三兆候が現れますが子宮内膜症でも①子宮及び付属器が硬くなり(しこる)②月経痛や性交痛、排便痛が強く(痛む)③ブルーベリースポットといって腹腔内膜及び子宮膣部にブルーベリー状の青紫の斑点が生じ(黒ずむ)、東洋医学の論理と西洋医学の臨床症状の一致が証明されます。ホルモン治療の合わない方、風邪や扁桃腺炎等にかかりやすく免疫機能の低下している方、色々と体調のすぐれない方、不妊で困っている方には東洋医学がお勧めです。

 特に子宮内膜症の方で挙児希望のある場合、自験例では65%の妊娠率を誇ります。又、漢方薬を半年以上服用していくと、子宮周囲の可動性が非常によくなり、直腸診の際の痛みがとれるのが実感されます。東洋医学では最悪の場合、癒着はあっても構わない、癒着はあるままで痛みはとろうと考えます。詳しくは当クリニックの小冊子を参考にして下さい。

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No.10『腰痛』

今月のテーマは腰痛です。腰痛に関しては原因疾患の精査が重要で変形脊椎症、椎間板ヘルニア、腰椎辷り症、あるいは骨の悪性腫瘍など整形外科的疾患の他に心因性のものや子宮筋腫、尿管結石の有無などをチェックすることが大切です。整形外科的な治療でも治らない場合や便秘、冷え、胃腸障害、疲れなどが併存する場合には東洋医学が有効でしょう。特に更年期以降の腰痛には驚くべき効果を発揮する事が多いようです。実例を挙げてみましょう。

①背中が冷えて腰痛の為に眠れない人が芍甘黄辛附湯で治った症例
②寝返りの度にズキンとくる腰痛がよく苡仁湯で治った症例
③ぎっくり腰が持病としてあり寝腰で腰痛の為に首を反らせない、手が動かせないなどの症状がマジックのように治った症例
④顔がのぼせる難治性の坐骨神経痛の治った症例
⑤夏クーラーで腰が痛む人に五積散で治った症例
以上は何れも一日の服用で治癒した症例です。

他には当帰芍薬散、防己黄耆湯、防風通聖散、麻薬杏甘湯、疎経活血湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯などがあります。芍薬甘草湯は別名、去杖湯とも言い文字通り杖が不要になる痛みを取る薬という意味ですが頓服で飲むと痛みに有効です。腰痛では鍼灸などの併用がより効果的です。また日常生活でも入浴法や食べ物や衣服などに留意し冷えに対して防御する習慣が大切です。

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No.11『最近経験した興味深い症例』

今月はQOLの話題は一休みして最近経験した興味深い症例をアトランダムにご紹介しようかと思います。

まずは
①耳たぶのかゆみを訴える人が大承気湯によって一週間で治癒した症例
②いつも下痢で、一度でよいからぐっすりと眠りたいと悩む方が甘草瀉心湯加味方で寛解し念願の海外留学を果たした症例
③クーラーによる腰痛を五積散で治療した際「あなたはこの薬で妊娠しますよ」と話し、予告通りに一年後妊娠した症例
④折衝飲の服用で子宮内膜症による激しい月経痛が治り直径4.5cmの両側チョコレート嚢腫を合併したまま妊娠した症例
⑤大柴胡湯合桃核承気湯服用二年で体重が76kgから62kgに減量し便秘と共に赤ら顔も治った症例
⑥某医学部助教授から「もうHRT(ホルモン補充療法)しかありません」と言われた早発閉経患者が二か月後から毎月月経を再開した症例
⑦腹腔鏡下手術を二回施行後LHRH療法を三クール投与後も左骨盤痛がとれない子宮内膜症例が小腹逐於湯で初めて月経痛がなくなった症例
⑧妊娠32週以降の逆子が30例全例つまようじ1本で、頭位に戻った症例群
⑨五年間にわたる無月経がカウンセリングによる不眠治療の後漢方投与により毎月月経を再開した症例

東洋医学では従来の西洋医学の観点からすると目を見張るべき「ミラクルワールド」を内包しているようです。更に西洋医学を併用・融合することにより難治性疾患に対しても新しい医療シーンを展開する可能性が高い事を実感させてくれます。

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No.12『風邪襲来のシーズンとなりました』

今年も愈々、風邪襲来のシーズンとなりました。頑健な方ならば総合感冒薬及び鎮咳去痰剤、抗菌剤、消炎鎮痛剤の服用で問題ないと思われますが、4日以上経過し咳が長引くと鎮咳剤が無効のことが多くなります。このような場合、東洋医学は咳のタイプ(空咳か、痰が多いか、寝る前に多いか、夜咳で目がさめるか、胸痛はあるか、顔が赤いか等)により幾つかの薬を使い分けることで著効を示します。逆に風邪のひきはじめでは肩がこるか、汗をかいたか、悪寒が強いか、喉の痛みが強いか、関節痛がないか等によりそれぞれ個々人にあう薬を処方します。私自身の体験ですが、風邪をひいても汗をかかず、首の後ろがだるい時、葛根湯をのんだ後汗ばみ、眠くなって2時間後目覚めた時にはすっかり風邪が治っていたというのが私と東洋医学の最初の遭遇です。頑健でない方、抗菌剤等でカンジダ膣炎になりやすいとか副作用の出る方には東洋医学のほうが宜しいでしょう。また、1年中風邪をひいている様な人、扁桃腺やリンパ節の肥大しやすい人、消化器の弱い人等では日頃から体質を改善すると風邪にかかっても早く治り、罹患する回数も減ってきます。

風邪の原因は、寒くなると活動性を増すウイルスですが、漢方薬は身体を暖める作用が強く、ウイルスに対する抗体の生産を増強する作用があることが証明されています。

いざ、風邪をひいたら薬を内服する他にも風邪を引いた当日は入浴せず、うどんにたっぷり生姜を入れて食べ、暖かくして10時間睡眠をとるぐらいのつもりで休んで下さい。

蛇足ながら、民間療法ではミミズや赤トンボ、出目金の目玉を食する治療法もあるようです。でもチョットネーとは思いますが・・

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No.13『不正(性器)出血』

今回は日常経験する事の多いちょっと”ユウウツ”な不正(性器)出血に関してお話しましょう。一言で言うと不正出血は通常の月経以外の出血を総称しますが、出血を認めた時まずチェックすべきは妊娠の可能性(流産と子宮外妊娠)です。妊娠を否定した後、器質的疾患と呼ばれる子宮筋腫(粘膜下筋腫)、子宮内膜症、子宮頚管ポリープ、子宮癌、さらには子宮膣部びらん、性交による膣壁の外傷などを除いたものが、いわゆるホルモンバランスの崩れからくる機能性出血と呼ばれるものです。機能性出血は排卵のあるものとないものに分類されます。前者の排卵性出血の原因としては卵胞の発育障害による、卵巣ホルモンであるエストロジェン、プロジェステロン、の分泌低下が考えられます。無排卵性出血は視床下部、下垂体、卵巣の連係に問題があると思われます。以上の原因を調べるために超音波検査を行い子宮内膜の厚さや卵胞の大きさを計測したり、血液検査で種々のホルモンを測定します。

出血を認めた際、是非御自身でチェックして戴きたいのがBBT(基礎体温)です。基礎体温が1相性なのか2相性なのか、またいつ出血するのかを確認する事で、実は排卵がないのに形だけの出血を月経と間違えたり(無排卵周期症)、月経と月経の中間に見られる中間期出血であったり、月経が長く続く剥離不全である事がわかります。また高温相の立ち上がり方や高温相の期間を見る事で黄体機能不全症を見分ける事もできます。

治療としては、止血剤やエストロジェン製剤およびプロゲストーゲン製剤の単独もしくは合剤または低容量ピル、排卵誘発剤を用います。思春期の不正出血は簡単に止血するものが多いのですが、もっと年長になると製剤の使用で出血が止まらなくなったり、逆に出血を誘発したり、存外に難渋する事があります。薬剤で止血不能の場合は子宮内膜の掻爬手術を行います。不正出血は排卵異常が関与するケースが多い為、将来の不妊症の原因ともなる可能性が高いので軽視してはいけません。

一方、東洋医学では(脾虚統血)と言って出血は消化管機能が弱ると血管から血液が漏れると言う考え方と(腎虚)と言って生殖機能の低下が他の誘因と相まって出血させると考えます。朝は食欲がないとか脂っぽい物はダメ(脾虚)とか、長く立っていると足腰がだるくなったり、電車ではすぐ空席を探すような方(腎虚)やストレスのために血液循環が悪い方(気滞血於)に不正出血が見受けられるように思います。東洋医学ではきちんとした月経は体調のバロメーターであると考えます。毎日を元気に溌剌と過ごせるQOLの高い生活を送れるようになると不正出血はなくなっていきます。 

最後に一言追加すると更年期出血なども含め、どんなに出血量が多くても必ず1週間以内に止血する漢方薬があります。

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No.14『避妊に関して』

唐突ですが最近の若い女性の間で(10代後半から20代前半)人工中絶手術が増えているようです。手術費用は10万円位かかりますし、精神的にも肉体的にも傷つくのは女性です。と言うわけで今回は避妊に関してお話しましょう。今までは避妊は膣外射精やコンドームなど男性主体で行われてきました。しかし全ての男性が常に理性的であるわけではなく勤勉でもありません。コンドームを装着しないで性交したり、コンドームの破損や膣内残存、さらにはレイプによる妊娠もあります。これからは、女性が自主的に性生活を管理する為にも、また、望まない妊娠を避ける為にも低用量ピルは必携でしょう。ただSTD(性行為感染症)の予防はピルでは不可能なのでパートナー同士の特定ができない場合はコンドームの着用を協力してもらったほうが賢明でしょう。

万が一、前夜に妊娠の危険があった場合には、緊急避妊ピル(モーニングアフターピルといいます)の使用が考えられます。婦人科診察後に中用量ぴるを2回服用してもらいます。

一方、妊娠、分娩を終えた産み終え世代の方にはまた妊娠するのは恐いという気持ちがおありだと思います。このような方には、ピルの他にもIUDなどのリング、ペッサリー、女性用コンドームなどの方法があります。

ここで、最近話題の低用量ピルに関して説明しておきましょう。このピルは、従来の中用量ピルに比べホルモン量が少ない為、副作用のリスク(子宮癌・卵巣癌・むくみ・体重増加)が格段と減少されます。避妊法としては勿論のこと(避妊率は98%)副効用による月経痛及びPMS(月経前緊張症)の軽減、月経量の減少、にきびの治療とかなりの効果が認められます。特に妊娠を望まない子宮内膜症の管理にはお勧めかもしれません。 

低用量ピルには服用の期間により21日タイプと28日タイプがあります。服み忘れがないようにするためには28日タイプの方がよろしいでしょう。また、月経の1日目から内服を開始するday1スタートと日曜日から開始するsundayスタートがあります。彼とのデートやスケジュールなどで土日を月経からはずしたい場合はsundayスタートの法がベターでしょう。他にもホルモン量を調節する意図で1相性、2相性、3相性の3タイプがあります。「現在は2相性は日本では販売していません。)出血を避けるなど患者さんのニーズにより使い分けができればよろしいですね。副作用としては血栓症が挙げられますが、高血圧・高脂血症・乳癌・子宮筋腫・肝機能障害などの方及び、35才以上で1日15本以上煙草をのむ方も副作用の点から御相談下さい。以上の点からピル開始の前には一般血液検査、子宮癌検査などを一応なさったほうがよろしいでしょう。

尚、当クリニックではピルは2,100円/月で提供しております。ご希望の方は、お問い合わせください。

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No.15『STD(性行為感染症)』

最近、女性週刊誌などで取り上げられることの多いSTDが今回のテーマです。STD(性行為感染症)は文字どおり性行為により感染する疾患を言います。具体的に下記のものが挙げられます。

(1)クラミジア
クラミジア トラコマチィスと言う小さな細菌が原因で特に若い女性に蔓延している疾患です。感染後1~3週間経過して帯下が増えたり時には下腹痛や尿道痛をきたします。放置しておくと不妊症や流産、新生児結膜炎の原因ともなります。男女共症状があまり強くないので知らずに他人に感染しているのが昨今の急増の原因と思われます。抗菌剤の2週間投与で治ります。

(2)淋病
最近徐に増加していると言われる疾患です。淋菌が原因で男性側に排尿痛と膿性分泌物をきたす事が多く、女性では軽微なのが特徴です。抗菌剤で治癒します。

(3)梅毒
スピロヘーターが原因で戦前戦後は多く見られましたが、ペニシリンの普及により治癒が可能になった疾患です。最近やや増加しているとも言われています。

(4)性器ヘルペス
女性に多い疾患です。HSV(単純ヘルペスウイルス)に感染後2~10日経過して外陰部に水泡と潰瘍を形成し排尿時や歩行時に激しい痛みを呈します。リンパ節の腫大をみとめ、再発が多いのも特徴です。抗ウイルス剤の5日間投与が通常ですが、柴令湯という漢方薬を併用するとより早く治ります。

(5)尖圭コンジローム
男女共に見られる疾患です。HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)により、外陰部に小さなカリフラワー状のイボが塊を形成しますが、あまり自覚症状がありません。治療薬として抗ウイルス剤がないため、液体窒素や電気焼却を行うのが通常ですが、感染ウイルスが深く残るために難治性になったり再発を繰り返す事もあります。ヨクイニンと言う漢方薬が著効を示します。

(6)エイズ
HIVというウイルスが原因で以前は輸血や注射器の打ちまわしが主たる感染経路でしたが、最近は母子感染や異性間の性交による感染が増えています。免疫機能の低下により呼吸器症状や皮膚炎症をおこしますが、症状の現れないキャリアでは通常の生活が可能になってきました。

(7)トリコモナス膣炎
小さな原虫が原因で泡状の帯下が増加します。フラジールと言う膣内座薬で2週間で治癒します。

(8)カンジダ膣炎
カンジダアルビカンスと言う種類の真菌(カビ)が主たる原因となります。抗菌剤やステロイドの内服後、糖尿病・妊娠など、体の抵抗力が低下、異常繁殖し相当な痒みカッテイジチーズ状の帯下をもたらします。抗真菌剤の膣内関与で治療します。

以上述べた疾患に罹患した場合は早急にパートナーも治療しなくてはなりません。予防としてはコンドームを着用する事ですが、免疫力の低下が背景にある事が多いため、何回も繰り返す方は通常から健康に留意し、病気に負けない体力を付ける事が必要です。朝は食欲がないとか脂っぽいものはダメとか、長く立っていると足腰がだるくなったり、電車ではすぐ空席を探すような方は漢方薬で体質から治しましょう。

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No.16『更年期障害』について

先日、更年期障害に関する重大な発表が日本産婦人科医会からなされました。非常にタイムリーなので今回から何回かにかけて更年期障害に関するお話をしましょう。その発表の内容とは米国のNIH(国立衛生研究所)が1993年から8年計画で進めてきた”健康な閉経女性に対するホルモン補充療法(HRT)の有効性と危険性に関する治験”を突如中止すると言うものでした。この治験は50才から79才までの16608名を対象として行われ、結合型エストロジェン0.625mg/日と酢酸メドロキシプロゲスチン1.25mg/日を併用投与した8506名とプラセボ(偽薬)を投与した8102名をダブルブラインド法で比較検討したものです。5.2年間観察された中間期結果としてHRT投与の有効性としては大腿骨頚部骨折は26%、大腸癌は37%、全癌の発生数は24%と優位に減少しました。一方、危険性としてはプラセボ投与群に比し乳癌は26%、心臓発作は29%、脳卒中は41%増加しました。以上の結果からHRTによるリスク(危険性)がベネフィット(有効性)を上回っているとの判断を下し治験を予定より早く中止することになったものです。しかしこの結果を具体的に発生数から考えてみると、1万人の女性が1年間あたり乳癌が30人から38人と8名増加し、心臓発作は30人から37人と7人増加、脳卒中は21人から29人と8名増加しているにすぎません。また総死亡率は有意差がみられず、一人一人の女性における影響は極めて少ないとも考えられますが長期間の多数の女性に及ぼす影響を考慮したものと考えられます。当クリニックでもPOF(早発閉経)の方にはHRTを投与しておりますが、とくに乳癌の安全性に関しては留意しており2001年8月医学専門雑誌”cancer"に小葉癌が2.6倍増加するという報告が掲載されたこともあって経緯を見守ってきました。しかし今回の結果から一応HRTの長期投与は控えていく意向です。HRTが検討すべき点としてエストロジェンの少量投与や貼布剤や、乳腺には作用しないSERMの併用も考えられますが今後も経過を見守って行きたいと思います。

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